後編

13/14

233人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「すいませんねえ、どんくさい子で」  私と新田さんは、周りの客にぺこぺこ頭を下げながら、キャラメルを拾い集めた。テーブルの下に落ちたキャラメルを拾おうと手を伸ばすと、額同士がこつん、とぶつかる。 「いて」  私は額を手で押さえた。目の前に、新田さんの顔がある。その顔が微妙に近づいて──唇が、触れ合った。 「!」  後ずさった拍子に、頭がテーブルにぶつかり、ガンッ、と音がする。 「~っ!」  悶絶している私を放置し、新田さんはキャラメルを拾い上げ、テーブルの下から身を引いた。私は顔を赤くしながら、新田さんをにらむ。 「……いまの、なんですか」 「さあ。なんでしょうね」  彼は素知らぬ顔で言い、キャラメルを口に放り込んだ。ま、まるで気にしていない……。  新田さんは、キャラメルを飲み込み、 「オランダ行く機会があったら、連れてってあげるわ」 「私、オランダ行く必要ないですけど」 「観光がてら、各地で生キャラメルを売るの。よくない?」 「いいですねえ」  そんな時が、くるんだろうか。来たらいいな。性別とか関係なく、この人と一緒に歩けたらいいな。  男と女の間には、乗り越えられない壁がある。     
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

233人が本棚に入れています
本棚に追加