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「すいませんねえ、どんくさい子で」
私と新田さんは、周りの客にぺこぺこ頭を下げながら、キャラメルを拾い集めた。テーブルの下に落ちたキャラメルを拾おうと手を伸ばすと、額同士がこつん、とぶつかる。
「いて」
私は額を手で押さえた。目の前に、新田さんの顔がある。その顔が微妙に近づいて──唇が、触れ合った。
「!」
後ずさった拍子に、頭がテーブルにぶつかり、ガンッ、と音がする。
「~っ!」
悶絶している私を放置し、新田さんはキャラメルを拾い上げ、テーブルの下から身を引いた。私は顔を赤くしながら、新田さんをにらむ。
「……いまの、なんですか」
「さあ。なんでしょうね」
彼は素知らぬ顔で言い、キャラメルを口に放り込んだ。ま、まるで気にしていない……。
新田さんは、キャラメルを飲み込み、
「オランダ行く機会があったら、連れてってあげるわ」
「私、オランダ行く必要ないですけど」
「観光がてら、各地で生キャラメルを売るの。よくない?」
「いいですねえ」
そんな時が、くるんだろうか。来たらいいな。性別とか関係なく、この人と一緒に歩けたらいいな。
男と女の間には、乗り越えられない壁がある。
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