前編

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 私と新田さんが勤めているのは、名古屋にあるシステム開発会社だ。私たちが所属している総務課には、女の園とかいう怪しい二つ名がつけられている。新田さんがやんわり受け入れられているのは、女性が多いから、というのもあるのかもしれない。  不思議なことに、新田さんは女性社員に騒がれない。どんなにイケメンだろうと、彼は性別イコール新田さんなのだ。  そんな女の園に、アダムがやってきた。 「経理課から移動してきました、神崎航(かんざきわたる)です。よろしくお願いします」  彼は歯磨き粉のCMみたいな笑顔で、女子社員たちを一瞬にして魅了した。  新田さんは他の女子社員と同化して、うっとりと言う。 「見てよあの子、かわいい~」 「でも、筋肉があんまりなさそうですよ」  私が口を挟むと、新田さんがふふ、と笑った。 「細かいことにはこだわらないのよ、アタシ」  つまりは、新田さんはいい男ならなんでもよしってことなのか。  神崎くんは、私の隣の席になった。爽やかな声で挨拶をしてくる。 「神崎航(かんざきわたる)です。よろしくお願いします」  私も同文句を返した。彼は私の社員証を見て、 「小城妙子(おぎたえこ)さん?」 「はい」 「妙子って、母の名前と同じです」  神崎くんはそう言って、白い歯を見せた。ほんとうに、歯磨き粉業界からCMのオファーが来そうな好青年である。  母親の名前と同じだからなのか、隣の席だからなのか、彼は何かと私に話しかけてきた。     
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