前編

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「すいません、コピー機が変なんですが」 「ああ、これ。蹴れば直りますよ」  私は、有言実行とばかりにコピー機を蹴った。神崎くんは、おそらくそんな人間を初めて見たのだろう。びっくりした顔でこちらに向ける。それから、人懐っこい笑みを浮かべた。 「小城さんって、頼りになるなあ」  なかなか気持ちのいい青年である。  時計が十二時を指したので、昼食を買うため席を立つと、見計らったように新田さんが寄ってきた。 「ちょっとアンタ、神崎くんといい感じじゃない、オギのくせに。どんな手使ったのよ」 「私、お母さんと同じ名前らしいですよ」 「なによそれっ、そんなんで仲良くなれるなら、私も妙子にするわよ!」  それは無理がないだろうか。 「あの」  声をかけられ、振り向くと、神崎くんが立っていた。彼は爽やかな笑みを浮かべ、 「お昼、どこかいい店ありますか?」  私と新田さん、神崎くんは、そろってコンビニに来ていた。 「お二人はいつもコンビニなんですか?」  神崎くんがそう尋ねる。 「まちまちですかね。ね、新田さん」 「そうね。あ、アンタこれ食べなさい」  新田さんは、私の持っているカゴに、チキンサラダを入れた。 「勝手に決めないでくださいよ」     
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