第6章 無限回廊6周目

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ふと、男の真後ろに浮かぶ例の悪霊と目と目が合った。 赤く燃えた瞳の中にぽっかりと口を開けた奈落の影。 そこに視点を合わせず、私はドクロのような顔の眉間をじっと見つめ返す。 怖くない。 恐くない。 あなただって、孤独に蝕まれた人間の霊なら温めてあげる。 北風のような鋭い風が吹きつけているような感覚になった。 有機物が腐敗する匂いの中に土の匂いがした。 世界はあなたを受け入れている。 存在していることが、そのまま愛だから。 「あなたも愛されている」 私がそう念じると、スゥっと離れて行った。 命は廻る。 めくるめく時の中で、命は出会う。 終わりは始まり。 肉体や自我が滅びても、魂は無限の愛だ。 その循環の中にあなただっているんだから・・・ね。
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