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夜が明けようとしているのか、空が白んできた頃。
ようやく泣き止んだおじさんが私を離して座り込んだ。
「・・・園長先生をなぜ殺したのか話してくれませんか?」
晴馬は黙って私のやることを見ていてくれる。
気が付いたお母さんも、こちらを見ていた。
おじさんは首を振りながら、言葉が見つからないみたいで困っている様子だった。
「園長先生には、生き別れた息子さんがいました。
彼女はたぶん罪悪感を感じていたのかな・・・家庭環境に問題を抱えているお子さんを預かり、親御さんが立ち直るための支援活動をしていました。
預けられたお子さんが寂しくないように、あの保育園でも大きな母性で皆のことをとても可愛がっていました。
彼女の心の中にはいつも、手放さざる得なかった生まれたての息子さんを抱いていたのだと思います。
そんな彼女のおかげで、寂しくない子供時代を過ごせた子供はとても多いんですよ。
私もその一人でした」
「・・・俺には、あの女は偽善者にしか見えなかった。
母親面をして、説教してきやがった・・・。
俺がどんな気持ちで生きてきたかなんて関係ないって態度で・・・」
「・・・もしかすると、園長先生の方が先に気付いていたのかな。
あなたが、息子さんだっていうことを・・・」
おじさんはカッと目を開いた。本気で驚いた顔をしている。
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