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きゃはは、とわざとらしいはしゃいだ笑い声をあげる。ナカちゃん、は、我が文芸部の顧問。手芸部も兼任していたはずだ。
先生にしてはちょっと軽めな性格の彼をわざわざ中田先生、と呼ぶ生徒は少ない。
「ふうつの常識的な人間のつもりなんだよーう。みんなして変だの疲れるだの失礼極まりないんだから」
「マフラーで首吊りだの言い出す常識人?」
「だってマフラーって伸縮性あるし丈夫だし、たぶん首吊りにぴったりだよ。たぶんね」
やわらかな布。長くて、伸縮性があって、丈夫で、あたたかくて、まるで愛情みたいな自殺道具。
くすくす笑いながら魔法使いの葛藤を書き始める。ナイフを扉に突き立てるか、自分のの首に突き立てるか、彼は延々と迷い出す。
扉に突き立てて扉を壊したとしても、世界が戻ってくるとは限らない。最後の希望を壊さないように、自分を壊してしまった方がいいのだろうか……。
袖をまくろうとして、目の前に座る人を思い出して、やめる。
「なあ、」
その腕をむんずとつかまれる。ちょうどみみず腫れになっているところで、あたしの肩が大袈裟にすくんだ。
「え、あ、ごめん」
「いや、ううん、こっちこそごめん。怪我してるとこだっただけ。なぁに?」
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