シャープペンシルと編み棒

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「だってバレたくなかったんですもんー……」 「なにが『ですもん』だ」 「えぇー、こぉんなに可愛いあたしなんですから似合わないはずないじゃないですかぁ」 きゃはっ、と笑う。わざとらしい、と評価される事の多いあたしの笑い方。 大嫌いな笑い方。 秋と冬と命の次に嫌いなあたしの笑い方。 「ええっとぉ、じゃあ、加那原せんぱぁい」 「うわ、先輩とかマジ気持ち悪い」 「ひっどいなぁもう。ね、今度はあたしから質問しますね。いいでしょ?――なんで、こんなところに連れてきたんですか」 そうた君――加那原先輩の手から自分の手を引き抜いた。ぱたんとコンクリートに落ちる自分の手が、ちょっと暗示的。だって。 「ここ、加那原先輩の妹さんの、茜が、飛び降り自殺したマンションでしょう?」 「そうだよ。あんたの友達の茜が飛び降りたところだよ」 「やだぁ、酷いなぁ。そんなところに連れてくるなんて」 よいしょ、と立ち上がった。 ひゅうひゅうと風が吹いている。十五階建てのマンションの屋上、十一月の夜。 ああ、寒いなぁ、寒いなぁ。門限も超えちゃったしなぁ。加那原先輩の手も振り払っちゃったしなぁ。ばかなことばっかりしてる。 さ、び、し、い、なぁ。 ……なんて。
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