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こちらを睨みつけてくるそうた君に向かって、きゃははっとあたしは笑う。
叫んだせいでがらがらと枯れた声で、寒さと嗚咽に震える声で、いつものようにわざとらしく、笑った。
こういうことが生きている、ということなのかもしれなかった。
汚くなっても、潰れそうになっても、汚い声で潰れそうに歪んだ顔で笑うことが。
「先輩――そうた君、ねぇ、明日も来てね、待ってるから。あたしを、待たせるんだよ」
魔法使いはいつか窓が窓ではなく、窓もその窓に映っているものも全て嘘かもしれない、と窓にナイフを突き立てるだろう。
「その間は、ちゃんとあたし生きてるはずだから」
「うん、わかった、から」
ぴかぴかと黒い瞳が輝く。
とっても綺麗だと思う。
こんなに綺麗なものを持ってるこの人のうつくしさ、みたいな、つよさ、みたいな、そんなものをきっと茜はとても好いてたのだ。そしてあたしも好いていくんだろう。
世界の終わった最悪の日々が終わった日だった。
End.
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