シャープペンシルと編み棒

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一対の編み棒を片方投げ出して、男子のおおきな手がスマートフォンを確認する。 「五十パーセント」 「うううん、そっかー」 くるくるとシャーペンを回して一考。たった一行、絶望を伝えるセリフだけ書かれたルーズリーフをファイルに閉じて、シャーペンと消しゴムを筆箱にしまった。 「あー……えっと、なんかごめん」 「えっ、なにがー?」 文芸部の部室から発掘した古い文庫本をぺらりとめくった。しおりの紐は途中でちぎれてる。確か今そうたくんが座っている椅子の後ろの棚にあった、と思う。 「えーっと、執筆?文芸部って小説書くんだろ。邪魔だった?パソコンも、俺のケータイの充電で使えないし」 「いや、別にー……あんまり集中出来てなかったし、うん、今日は書けない日なんだと思う」 「いや、その集中出来なかったの、俺のせいじゃねーのって」 「ああ……」 机に頬杖をつく。横目でそうた君を見やった。ごめん、とか言いつつマイペースに編み棒をかちゃかちゃと動かしている。恐らく、赤いマフラー、だ。 ぱたぱたと上下に足を動かしてみる。太ももに出来た青アザがずきりと痛む。 「ううんー、別にぃ。今日はあんまり調子良くないし、大人しく本を読めってことだろーね」
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