シャープペンシルと編み棒

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「はぁ。どういうこと」 椅子に座って編み物を始めたそうた君にへらーっと笑う。手は別の生き物のように動いている。 喋りながら小説を書いている、と、変なの、ってよく言われる。先生とか。先輩とか。あの子とか。 「だいたいねー、あたしと話すと疲れるって言ってみんな来なくなるんだー。ほら、顧問の先生、ナカちゃんなんだけどさ、先輩たちが卒業したら『お前と二人っきりは体力使うから無理』って言ってさぁ、来なくなっちゃった」 「へぇ、そうなんだ。俺はそんなに思わなかったけど」 「たぶんそうた君が適当だからなんじゃないのぉー?」 ぶりっ子みたいに、語尾を上げてみる。かたかたとキーボードを相変わらず叩いているし、視線もパソコンの画面に固定されてる。 解離している、と思う。意識と仕草と性格と言葉。ぐちゃぐちゃと混ぜられて、そして、解離。 「なんだっけ、塩対応ってやつ?さっぱり系ってやつだねぇ。おいしそう。でもあたしコンソメとかの方がいいな。豪華な気持ちになれるでしょ?」 「えぇと……うん、ちょっとわかった。疲れるわこれは。どーりでナカちゃんが連れてくるときに『覚悟しとけよ』とか言ってたはずだ」 「ええー、ナカちゃんひっどぉーい」
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