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意識が戻ると、知らないベージュの天井がぼんやりと見えてきた。
「……んっ……ここは……」
ぼんやりとした意識で、今の場所を確認しようと少し起き上がる。
自分の部屋ではなかった。
もちろん、“王子”と何度も身体を重ねた“時計”だらけの部屋でもない。
8畳くらいあるであろう、ベッドルーム。
カチャリと音がして、部屋に入って来たのは“薫”だった。
「気が付いた?」
「えっと……薫義兄さん?」
改めて、“王子”ではないことを確認するように声に出す。
「そんな恰好で、街をうろつくなんてどうかしたのか?」
「? そんな恰好?」
自分の着ている服を見ると、紅いふんわりとしたドレスに、白いフリル付きのエプロン。
「オレが声を掛けていなかったら、変な奴に連れて行かれるところだったんだぞ」
「あっ、えぇと……ごめん」
「オレの家に連れてきてから、大分寝ていたけど……身体は大丈夫?」
何か言いたげな瞳をしている薫だった。
“薫”の顔をした“王子”と数えきれない程に身体を重ねた感覚は生々しく、身体の芯からじんわりと溢れる感覚も残っている。
俯きながら、「うん、大丈夫」と答えると、薫はベッドに腰掛け未知の額に手をやった。
「少し身体が熱いな……熱でもあるのか?」
「ね、熱はない!!」
全力で否定をし、薫から少し離れる。
薔薇の甘い香りが漂う。
「ベッドで……」
「 ? 」
「いや、こっちのこと。ご飯食べよう」
薫に言われ、お腹がぐぅっと鳴った。
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