嫁との休日は恐ろしい恐ろしい

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俺に隙を微妙に見せるのが上手なんだろう。 冷えた真美子を温めるために、ロビーでくつろぐ。 が、嫁よ… セブンティーンアイス見てるね? 水泳の後のアイスは、美味いからなあ。 俺は真美子の視線をたどり、 小銭をじゃらじゃらさせ、 チョコチップいちごを買ってやった。 がこおんっと落ちてくるセブンティーンアイスに、「?」と 怪訝な顔。 俺は続いてストロベリークリームチーズを買う。 「え?えええ?」 「悩んでたんだろ、どっち食うか」 「う。どうしてバレてるんですかっ」 「悩んだときは両方食えよ」 「えっ!冷えちゃう」 「お残しは俺が食う」 ダブルチョコレートの、全粒粉ビスケットも売店で買っといた。 嫁、感涙。 俺、餌付け成功。 熱い ジンジャーレモンのハーブティを飲みながら 真美子を湯気越しに見る。 (半年前は知りもしなかった女を妻にしてる) 本当は結婚するつもりなんてなかった。 俺に家庭は向いてないと思っていた。 それなのに、嫁は懐に安らぐ鳥みたいに、 俺の奥深くに入っているのだ。 「へっくしょん、ぶえぶえ」 「すげえ、変なくしゃみ」 「ぶえっくしょい」 「クッキー食うか、くしゃみするか、どっちかにしなさいよ」 「クッキー食べます。 くしゅん」 俺は冷え切ってもなお、 アイスを離さない嫁をそっと抱きすくめた。 「みんな見てます」 「風邪、ひきます」 ひんやりしていたお前の体が桃色に染まり 気づけば、蒸気機関車みたいに赤くなっている。 「純だねえ」 うぶな真美子にくすくす笑う。 ねえ おうちに帰ったら キスしようか。
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