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「こんだけ映画やってるんやから、みんなも少しくらい分かると思ったのになぁ」 「自分も先週まで何にも知らんかったくせによく言うわ」 「ふふん、あれだけねえちゃんに教えてもらってん。高校で今勉強してるねんて」 俺は、よっしゃあ、と気合を入れて大きな伸びをした。 「ほな、来週の社会の時間もやるで」 「やんない。絶対やんない」 「次は鎌倉時代やな。誰やろ」 「絶対言わへん」 「ええやん。やろうな。次こそきっと、ウケるって」 「絶対ウケへんし、恥ずかしいだけやし、やらへんし」 「とりあえず、誰を言ったらいいかだけ教えといて」 「絶対言わへんわ!!」 絶対ばかりを連呼し、最後にはらしくない大きな声で叫びながら、彼女は白鷺駅で降りて行った。 なんだ、あんな声を出せるなんて、教室ではちょっと浮いてる彼女も普通の女の子じゃないか。 ホームから改札へ、階段を上っていく後ろ姿を見送りながら、俺はにやにやとほくそ笑んだ。さぁ、来週が楽しみだ。 でも次の土曜日、彼女は塾に来なかった。
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