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土曜日の次の授業は翌週の火曜日にある。 彼女は火曜日の授業には姿を見せた。授業中から俺を避けていたのは分かったけど、帰り道は絶対に二人きりになるわけで。 「先週、なんで来ぇへんかったん?」 ホームに降りてから、俺は仏頂面で問い詰めた。 俺にいじられるのが嫌で休んだなら、それは気に入らない。彼女が好きだっていうから俺だって頑張って百人一首を覚えたのに、裏切られた気分だった。 先生からは「ほれ、源実朝やで。例の奴は言わへんのか?」と逆に振られたけど、「知らんわ」とだんまりを決め込んだ。分かってくれる人がいないなら言っても無駄だし、それに俺が覚えてきたのは後鳥羽上皇の方だし。 電車を待つべくホームに並んで立つ。平日の夜だから混雑している急行電車が俺たちの目前を勢いよく通り過ぎていった。 彼女は俺の機嫌が悪いのに臆してしまったのか、しゅんとうなだれている。気まずい、というより冷え切った空気が辺り一面を覆い尽くす。 急行電車が通り過ぎて静かさが戻ってきた後、彼女はようやく口を開いた。 「…病院に行ってて」 「土曜の夜に病院?」 俺は鼻でせせら笑った。土曜日の午後なんて、どこの病院だって休んでいる。見え透いた嘘だと思った。 でも、彼女はこくんと頷いて言った。 「耳がよく聞こえへんくて」
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