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「ざっくり言うと、神様、忘れ物してごめんな、綺麗な紅葉で勘弁して、っていう意味」
彼女の説明に、俺は思わずふき出した。
「なんやねん、それ。道真って、天神さんやろ。うちの駅の名前にもなってるし。そんな偉い人が忘れ物なんて、おもろいな」
俺が言うと、彼女はひどくうれしそうな顔をした。かるたを本当に好きな人の笑顔だった。
いつまでもこんな笑顔をさせてやりたい、と俺は心底思った。
「このたびはぬさもとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに」
もう一度声に出して言う。
お、意外と覚えやすい。七五調でリズムが良いからだろうか。
「よっしゃ、これで残り96首やで。余裕やな」
「何がやねん。先はむっちゃ長いやん」
彼女には笑われてしまったが、これから帰り道、電車に乗るたびに1首ずつ覚えるだけなら、俺にもできそうな気がしてきた。
そうだ。彼女が一緒なら、大丈夫だ。
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