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発情中は、女子の生理の時の十倍も、精神が不安定になるって聞いた。
俺はその言葉に、思わず叫び返していた。
「迷惑って何だよ! 近寄るのも迷惑なら、小鳥遊の力でΩ収容所でも作れば良いだろ! αのあんたらに、Ωの気持ちが分かるのかよ!」
「ああ、分からない。その代わり、社会はΩの発情期中の休暇を認めている。自重してくれれば良いんだ。……着いた。四季は風邪で休むと連絡して、家に送り返しても良いが?」
「良いよ。保健室で寝る。何が自由な校風だよ。最低だ」
泣きたくないのに、発情期の不安定のせいで、頬を熱い涙が一筋伝う。
俺は、気に入られたなんてみんなに言われて、こいつに少し期待してたんだと思う。
転校続きで、Ωを隠して、ろくに先生やクラスメイトと仲良くなった事のない俺は、初めてこいつに期待した。でも、裏切られた。
裏切られた? たんに、信じた俺のミスなんだ。
俺は後部座席のドアを開けて、校門をくぐって走り去った。綾人の顔は、見なかった。
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