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ファッションビルの中の靴屋まで一直線に行くと、すぐに俺に合うショートブーツを選んでくれた。
ヴィンテージみたいな茶色の革が、わざとツギハギになってる、洒落たブーツ。俺も気に入った。
店員にこのまま履いていくと言って値札を切って貰ってる間に、いつの間にか会計を済ませ、履いてきたローファーはギターケースにしまわれていた。
凄い。エスコート、完璧。
「靴、ありがとう」
俺はまた指を絡めて歩き出す綾人に、慌てて礼を言った。
「恋人に礼を言われるのは、嬉しいもんだな」
「え、礼くらいするだろ」
「しない奴の方が多かった」
「あ……」
綾人、エリートだもんな。金目当ての女に、ちやほやされてきたんだろう。
そう思って俯くと、即座に綾人が謝った。
「ああ、すまない。デート中に、他の女の事を考えるなんて。許してくれ、四季」
格好はワイルドだけど、中身は真面目で誠実な綾人だ。
俺は少しホッとして、小さく笑って上目遣いで睨んでやった。
「クレープ、トッピングして良いなら、許してやる」
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