第43話 作戦

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「四季くん、写真についてだが、心当たりはあるね? 正直に話して欲しい。日付は、昨日のようだが」 「はい。俺、この人と付き合ってます。十八歳の誕生日から正式に付き合いだしたから、犯罪じゃないですよね?」  係長は、渋い顔をした。 「確かに犯罪ではないけど……こういう形で明るみに出てしまった以上、君に何らかの処分が下るのは、間違いないと思う」 「はい。俺たち両想いだから、何もやましい事ありません。処分は受けて立ちます」  咄嗟に、決闘するような台詞が出てしまう。  俺は、何と闘えば良いんだろう。心細くなって少し俯くと、後ろからポンと肩に手がかかった。  驚きに、息を飲む。振り返って、もっと驚いた。立っていたのは、綾人だった。 「俺と四季の写真を、バラまいた奴がいるようだな」  綾人! バレてないのに。 「誤解です。俺と恋人の写真です」 「何を言っている、四季。お前の夫は俺だろうが」 「副理事長!?」  ザワザワと廊下が騒がしい。綾人は、わざと職員室のドアを開けてきたようだった。 「俺と四季は、四季の十八歳の誕生日に入籍した。これが、戸籍謄本だ」  そう言って、一枚の書類を内ポケットから取り出す。係長に渡すと、真剣に目を走らせていた。  恐る恐る覗き込むと、確かに筆頭者に綾人の名前が、配偶者に俺の名前が載っていた。  いつの間に? 「親御さんにも、挨拶を済ませてある。俺と四季は、夫婦だ」 「嘘! 四季、誕生日、まだの筈よ!」 「ハシユカ、君の思い違いだ。四季は一昨日で、十八歳になったんだ」  ハシユカに誕生日を訊かれた時、俺は嫌な予感がして、咄嗟に嘘を吐いた。自分でも何で吐いたか分からない、小さな嘘。  カミサマは、確かに何処かに居て、ヒントを囁いてくれたらしい。 「こういう事になった以上、私と四季の結婚を、発表しなければならないな。四季、良いか? この学園には、不純異性・同性交遊を禁止する校則はあるが、十八歳以上の結婚を罰する校則はない。発表すれば、無事に卒業・進学できるだろう」 「あ、綾人が良いなら」 「勿論俺は、構わない。四季は、何処に出しても恥ずかしくない妻だ」  ザワザワが、キャーと黄色い悲鳴に変わる。  綾人の作戦のお陰で、俺たちは事なきを得た。  全校集会で壇上に立った綾人が、俺を妻だと言った時は、死ぬかと思うほど恥ずかしかったけど。
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