第1章 真実と始まり。

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教室へ戻ると普段は静かな教室が少し騒がしい。 『アミ、何かあったの?』 黒髮を後ろで束ね、純粋な丸い目をした活発そうな女子が後ろを振り向く。 『あっ、いいとこ来た。来週の人機博物館の見学中止らしいよ』 『はぁ?』 つい素っ頓狂な声が漏れた。 メイガロス王立学園では、人族の歴史の基盤を作り上げた機械兵器、機兵の歴史と知識を学ぶべきであると言う考えから、卒業前に人族(ひとぞく)による機兵の歴史を展示している、人機歴史博物館(じんきれきしはくぶつかん)を1日かけて見学を行うのが恒例の行事となっていた。 『モブオが先生の話してるところ聞いたらしいけど、なんか火災があったから無くなったみたい。』 『マジか…、個人的にかなり楽しみにしてたんだけど…。』 『機兵オタクのアンタからしたらそうかもしれないけど、興味ないアタシからしたら退屈でしかないんだけど』 なんか髪をいじりながらジト目で愚痴ってやがる。 聞き捨てならん。 『行けなくなったなら仕方がないよな、代わりと言ってはなんだが、俺が機兵の歴史をゼロからまた叩き込んでやっても良いんだぞ?』 『ごめん…、思い出すだけで頭痛くなるから本気でやめて』 昼休みの終わりを告げる鐘の音が鳴ると同時に、汗と土で汚れたヴィットが戻って来た。何故か睨まれているが、俺は断じて気がついていない。 『はぁ~いみんなぁ、席についてぇ~』 いつものように聖母のような優しいオーラを纏いエリス先生が教室へ入る、全員が席に着いたのを確認し口を開く。 『もう、噂になってるみたいだからみんな知ってるかもしれないけどぉ、人機歴史博物館で火災が起きてしまった影響で博物館見学は中止になってしまいましたぁ~』 『マジか!?』 ヴィットが勢いよく立ち上がり叫ぶと同時に、立てられた歴史の教科書が倒れ机から落ちる。 そして現れる弁当。 振り下ろされた分厚い参考書の角がヴィットの頭頂部を確実に捉える。 勢いを弱めないままに机へと到達した頭はゴウと大きな音を立て再びヴィットを跳ね上げた。 力なく椅子にもたれた彼をよそに先生が弁当を取り上げて続きを話し始める。 一瞬の出来事であった…。 知性あるものたちは、ただ前を見て沈黙するのみであった。
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