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確かに私の希望にピッタリな人だ。ただ、そうなってくると後は相性が心配になってくる。私は決してお喋りが得意じゃないし、人見知りだし。
うるさい人、粗暴な人、軽くて表面的に話す人……苦手とするタイプは多い。
そんな私の不安を見透かすように五木さんは柔らかい笑顔を浮かべた。
「マイクはハーフだけど、容姿はモロ外人な風貌だから、それで偏見を持たれたり誹謗中傷を受けたりしたこともあるから、マイノリティ(少数派)の気持ちがわかる優しい人です。きっと気が合うと思いますよ。それに地元のお祭りのボランティアなどもしているので、たくさんの方々とお話する機会も多いから会話も上手だし。あっ!」
五木さんは会話の途中で、何かを思いだしたかのように声をあげた。
「嫌やわ。私、マイクの資料の書類を持ってくるのを忘れてるわ。田中様、すみません、少しだけ席を外しますね」
そう言って会議室のドアが閉じる。
私はその瞬間に深々とため息。不快な訳じゃない。ただ単純に知らない方と長い時間、一緒にいるので慣れなくて気疲れしているだけ。
「会話していて少し楽しい気分にもなっているのに、こんなに疲れているなんて、大丈夫なのかしら……私」
そう心の不安を吐き出す。
でも、それは今までの私がもたらす結果なんだと冷静に考えていた。
必要最低限しか他人と会話せず、ひとりだけの世界に浸り続けていた結果。ひとりは楽。仲良くなると色々と内情を探られるから面倒。交際費にかけるお金がもったいない……そんな金銭事情も確かにあったけれど。
もう一度、私は息を吐き出す。今度はため息じゃない。ゆっくりと深呼吸をした。
『変わりたい』
そんな欲求が生まれたのは私自身。しゃんとしないと!
そんな風に自分自身を鼓舞したあと、ゆっくりと会議室のドアが再び開いた。
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