STORY 《Ⅰ》-one-マイクver.

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どういう意味やねん!と俺が尋ねる前に、ユーキに関しての幾つかの注意事項や懸念事項を事務的に告げられて。 「私が会議室入ったら5分後に入ってきて」 マリカはそう言うと、自分の事務机に置いてあった書類をひらりと取って事務所を出ていった。 「ったく!なんやねん」 俺は空いてる椅子にぼすんっと乱暴に座る。 「相変わらず、仲良いですよね」 俺を呼びにきた事務スタッフが、そう言いながら缶コーヒーを置いてくれた。 会釈だけで礼をして、俺は無言でプルトップを開けて、一気に缶コーヒーを飲み干す。 そして、マリカの性格分析付きのプロフィールを頭に叩き込む。時計の針を確認してから立ち上がって会議室に向かった。 ノック二回。「どうぞ」とマリカの応答があったので、ドアを開けて大股で中に入った。 「田中様、ご紹介しますね。彼がマイク・アンダーソン。あなたの家庭教師候補になります」 マリカのその言葉で俺は軽く会釈をする。そして『タナカユーキ』を一瞥した。 ユーキに対する第一印象は『暗い』『野暮ったい』『覇気がない』やった。俺の姿を見て驚き、動揺している。 まぁ、よっぽど外国渡航が多い日本人やないと、大体の日本人は初めて俺を見るとちょっと動揺する。 「彼の父親はアフリカ系アメリカ人なので、容姿は黒人ですけど、見慣れてしまえば普通ですよ」 黒い肌。チリチリの黒髪。やたらとデカイ身長のせいで、最初は怖がられることが多い。 「初めまして。マイクです。すみません、最初は見慣れなくて怖いかもしれませんけど、ちゃんと人間なんで安心してください」 マリカからの注意事項その一。『最初のうちは強めの関西弁を控えなさい』に則り、俺はゆっくり柔らかく聞こえる声音で挨拶した。もちろん、笑顔付き。 ユーキは恐る恐るといった感じで俺を見る。そして、俺の笑顔を見て少し安心したのか、表情は強張ってはいたが、ちゃんと目を見て挨拶をしてくれた。 「あ、ごめんなさい。私は田中祐希です。初めまして」
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