STORY 《Ⅰ》-one-マイクver.

5/8
前へ
/155ページ
次へ
俺がマリカの横に座ると、マリカがユーキにこれからの流れを説明していく。 明日以降、ユーキの都合の良いときに三回、トライアルの授業をする。トライアルやから無料やけど時間は一時間だけ。場所もココか下のカフェで行う。 そして三回目のときに俺で続行して良いなら、そこから本契約や。 マリカが本契約になった際に必要な書類や金額、契約書の作成についてなど、わかりやすく丁寧に説明している間、俺はユーキを観察する。 化粧っ気のない顔。少しパサついた長い黒髪。服装は無地のグレーTシャツに黒のカーディガンと黒ズボン。常に目玉がキョロキョロしていて無表情。マリカの話を聞きながらも、俺の存在を気にしてチラ見してくる。 あかん。こりゃ、完全にコミュ症気味やろ。俺を信頼してくれるまでに時間かかりそうやなぁ。三回で攻略できるやろか? 俺はもちろん笑みを浮かべながら、そんな打算的なことを考えていた。 マリカの説明も終わり、トライアルの日時も決まったタイミングで。 「そうそう!田中様、このビルの一階のカフェ、来たことあります?」 マリカの質問にユーキは首を振る。 「下の『スペシャルアイス珈琲』は絶品ですよ!下のカフェも弊社が経営していて、弊社専用の個別スペースが奥にあるんです。もし、この後お時間あれば行ってみません?」 マリカの誘いにユーキは困惑している。 心の声的に「行きたいけど、人とのコミュニケーションに疲れた。帰りたい。でも行ってみたい」そんな感じやろう。 なんだかんだと上手にマリカが誘導していくので、最終的にユーキは了承した。そして、三人で会議室を出た後。 「ほな、マイク。後、頼んだで!」 そう言ってユーキに挨拶をしてから、さっさと事務所に戻ってしまった。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加