STORY 《Ⅰ》-one-マイクver.

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グラスの中を少しだけかき混ぜると、俺の肌の色のようになる。 真っ黒の中に少しだけ混ざる白。濃いブラウン。 ストローでコーヒーをすすると、程よい甘さ。俺は「もっと甘い方が好みやったら、もうちょいかき混ぜたらええよ」と言うと、ユーキは素直に長めにかき混ぜた。 一口すすり、余程美味しかったのか満面の笑顔を浮かべた。 目を細めて、眉が少しだけ下がり、少し小さめの唇の両端が上に上がる。無垢な光に包まれる感覚。打算も計算もない子供のような。 その笑顔はさっきまで抱いていた『コミュ症気味のちょっと面倒くさそうな女』というイメージを完全に払拭する威力があった。 夜の闇を一掃する暁の光。 少し、言い過ぎやもしらんけど、そんくらい晴れの力に満ちていた。 でも、すぐにその笑顔は無表情の中に沈む。あかん。この子の魅力や本質はこの『笑顔』の中に内包されてる。笑顔にしたい。笑顔が見たい。 初対面の人に対して想うには強すぎる感情、欲望。 自分の感情コントロールが上手やと自負している俺ですらもて余す程の。 「あっ」 そこにユーキの微かな驚きを示す声。どうしたのかと彼女を眺めると、目を閉じていて、耳を踏まそうとしている。 店内の曲が、インストバージョンではあったが、古い映画主題歌の洋楽になっていた。 この歌が好きなんやろうか? 「……When the night has come……」 俺は軽く口ずさむ程度の音量でインストに合わせて歌う。ユーキは驚きながらも俺を見ている。 俺はニコリと笑って歌い続けた。ユーキの表情に嫌悪感はない。いきなり歌い出した俺をただ見つめている。 深い愛情に満ちたラブソング。 それは恋人だったり、妻や夫だったり、子供や祖父母などの家族だったり、友達だったり。愛情を傾ける全ての愛しい人達に送るラブソング。
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