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公園の入口で立ち尽くしていた私にマイクが気付いて、笑顔を浮かべて私を手招きする。
「ユーキ。髪、似合ってんな。俺が勧めたあの美容室で?」
私は小さく頷く。
「ミルキーさん、元気やった?」
私が髪を切った美容室はマイクが勧めてくれたところで、美容師のミルキーさんを指名するといい、と言ってくれたのもマイクだ。
まだまだ人見知りが酷い私はお喋りや質問が多い美容師を苦手としている。そんな中、長い時間を拘束されるのが嫌で、いつも利用していたのはシャンプーなどがない15分程度でカットしてくれる簡単美容室。
「『たまには腕の見せ所の少ないマイクの髪を切らせに来なさい』って言っていたよ」
私の言葉にマイクは破顔する。
「相変わらず、ひでー言い種やなぁ」
ミルキーさんはマイクから私のことを聞いていたのか、やたらな興味本意の質問は少なく、私がリラックスできるように配慮してくれているのがわかって、心地好かった。
そして、真剣に私の外見と向き合い、『どうすればこの子がもっとキレイに、もっと魅力的になるのか』を追及してくれた。それは気恥ずかしくもあり、それでも、そのプロの美容師としての気概はスゴいと思った。
『お金』という対価に対して返すのは個人の価値観を越える『魅力』の提供。プロとしてのアイデア、維持するためのアドバイス。
「素直にスゴいなと思ったよ。外見を整えることは恥ずかしいことじゃないのよって笑い飛ばされた」
「せやろ?ユーキは頑固やから、美容についてはなかなかアドバイス聞いてくれへんかったからなぁ」
そう。
マイクと私は家庭教師と生徒の関係になった1ヶ月後、ある『契約』をした。
会社に内緒な裏の契約。
それに則り、マイクは私の生活そのものの変革を提案し続けてくれている。
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