STORY 《Ⅰ》-two-ユーキver.

9/27
前へ
/155ページ
次へ
しばらくすると、マイクが近寄ってきて「ちょっと休憩しよか?」と、小さな川が流れるエリアへ。その川の付近には点々とベンチが据えてあり、マイクは自販機で飲み物を買ってから、そこに座った。 二つ買った飲み物のうち、私がよく飲んでいるミルクティーを渡してくれたのでお礼を言って飲んでいると「カメラ借りるで」と言って、カメラからSDカードを抜き取ってタブレットに刺さったカードリーダーに差し、私が撮影した写真達がタブレット内に表示される。 大きな画面で見ると、ピントが甘かったり、撮りたいと思った主体が目立っていなかったり、色合いが暗すぎたり、明るすぎたりとバラバラで。 恥ずかしい!と思ったけれど、そんなできそこないばかりの写真でも、マイクは真剣に一枚ずつ丹念に見ていってくれる。 「うん。まぁ、初心者らしい写真や。でも、これとこれとか俺は好きな雰囲気やで」 そう言って幾つかの写真を指して、これはどんな感じに撮ろうと思ったのか?と質問されたので、たどたどしく説明して。その後に出来映えのよくない写真の改善点を教えてくれたので、効率の良いピントの合わせ方や、光の取り入れ方、暗い場所を撮るコツなどをカメラで練習する。 そして、また別行動で互いに写真を撮り、またタブレットを見て、感想を聞いてレクチャーを受けてを繰り返す。お昼過ぎには売店でサンドイッチを買って食べて、また繰り返す。 もうそろそろ、夕方の時間になったとき。青空は広がっていたけれど、夏の眩しすぎる日差しがふわっと優しくなる。 「これくらいの日差しだと、全ての被写体が柔らかくなって素敵かも」 そう独り言を呟いて、目の前のヒマワリを撮った後、少し遠くにマイクの姿が見えた。 何かを見つめる横顔。カメラにはそこまで深くはないが望遠機能がついている。私は設定をモノクロに変えてから、マイクの写真を撮った。 そして撮った途端、「まるで盗撮じゃない」と恥ずかしくなって、その写真を削除しようとしたけれど……できなかった。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加