STORY 《Ⅰ》-two-ユーキver.

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どうしてだろう? 本人が知らないトコロで勝手に写真を撮ることはマナー違反だってわかっているのに。 何故か、このマイクの写真に執着している。消したくないとこだわっている。 今まで環境にも衣服にも好みにも、何も執着せずに生きていたのに……ううん、違う。私は今まで何となく生きていて『何が好み』で『何が好き』なのか全く考えたことがなかったんだ。そして、今。 そこまで思考していたとき、マイクに話し掛けられた。 「ユーキ。この植物園な、面白い場所があるねん。最後にそこに行きたいんやけどええか?」 私は思考に入り込んでいて、頬が熱くなったけれど、それを悟られないように俯きながら了承した。 そして、マイクが連れてきてくれた場所は。 「ジオラマ広場?」 「そう。ミニチュアでとある景色を作っていて、ミニチュアやとわからん角度で写真撮ったら、結構面白いねん」 まぁまぁの野外スペースに充分な距離間隔で様々なミニチュアが飾ってあった。 雪景色の風景。都会的なビルが乱立する風景。南の島の海と白浜。純日本家屋と日本庭園。その風景の中には人を模した人形や風景にあった家具などが配置されている。本当に精工に作られていて、ただ見ているだけでも楽しめた。 マイクは「こっち」と私を誘導してある景色で立ち止まった。 そして、マイクは前後に細かく移動しながらファインダーを覗き、数枚写真を撮って確認すると「ユーキ。俺のいるこの場所に立って」と指示された。 そして、私のカメラを断りを入れてから設定を変えて、私に返してくれた後。 「ファインダーに景色が収まる位置で撮ってみて」 私は何度か細かく移動してファインダーを覗く。ここかな?と思う場所でカメラを構えると、マイクがすぐ真横に来る。近すぎる距離に何故か心臓が騒ぎだす。 「うん、たぶんこの位置でええ。三点のピントの真ん中で焦点合わせて撮ってみて」 真横から直接耳元で聞こえる指示。あまりに心臓が騒ぐから手元が震えそうになる。でも、マイクが何故、この景色を撮らせようとしているのか、その意図がわかっているから、少し深呼吸してからカメラを構えて撮った。
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