STORY 《Ⅰ》-two-ユーキver.

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撮りながら少しだけ涙ぐんでしまった。 今、私が撮影した景色は、昔母が撮った湖の景色にとても似ていて。今、私と共に母が傍に居ているように感じて。嬉しくて懐かしくて涙が溢れてくる。 私はマイクの前では泣き虫になるみたい。他の人の前では無表情なのに。感情があまり動かないのに。 「さぁて!今日のレッスンはここまでや!ほな、今から裏契約の時間や。ユーキ、飯、食べに行こっ!」 私の涙にたぶん気付いていて、少し陽気な口調で言うマイク。 植物園から駅前に戻ってくると「イタリアン風バルの店に行こうと思うんやけどええかな?」マイクの提案に私は頷く。私の半歩先をマイクは先導するようにゆっくり歩く。 家庭教師のレッスン時間は本当は3時間だけ。それはサブレッスンでも例外ではない。こんな風に半日を費やすことは本来はできない。けれど、マイクは英語のレッスンでもたびたびその規則を破る。 そして、家庭教師と生徒の関係である限り、個人的な付き合いも禁止されている。こんな風にレッスン後に食事なんて本当はできない。 約3ヶ月前。マイクは私にある提案をした。彼とのレッスンも1ヶ月が経ち、彼に対しての警戒心も緊張感もかなり薄れていて、家庭教師としての彼に信頼感さえ芽生えていた頃だ。 「嫌やと思ったら断ってくれてええ。ちょっと踏み込んだ話をするで」 そのときのレッスンは私の家の傍の図書館の裏庭だった。彼は結構屋外が好きな性質で、この1ヶ月の間も天気が良いときは外を指定された。 レッスンも終わり、教材の片付けをしていた時だ。私は何を言われるのか検討もつかずに小首を傾げながら彼の話を聞いた。 「本来、俺が教えるべきはお金を貰っている英語だけ。でも、ユーキと一緒にいて、もっと色んな事を教えてやりたいなって思ってん」 色々な事?まだ要点が掴めない私はマイクを見つめる。 「1ヶ月、ユーキと一緒にいて、感じたことを言うで。ちゃんとしたバランスのええ食事をしていないこと、まともな生活環境やないこと、身なりを整えるのが苦手なこと、対人関係スキルが乏しいこと」 次々と指摘される内容は正に事実で。私は恥ずかしさのあまり赤面した。 「勘違いすんなよ。俺はそれらを指摘してユーキを辱しめたい訳やない。そうやって俯いてまうっていうことは自覚してるんやろ?」 私は恐る恐るマイクの目を見る。ものすごく真剣な表情。私は小さく頷いた。
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