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「ちょっとした雑談とかで、ユーキが知り合いや友人のいない関西に関東方面から引っ越してきたことや、両親がいないことは理解している。教えてくれる人がおらへんねん。ユーキがそんな状態でいることは別に恥ずかしがることやない。ただ」
マイクはそこで言葉を切る。充分に間を取った後、おもむろに手を握られた。反射的にはね除けたくなったけど。
「逃げんな。落ち着け。俺の目を見てくれ。俺は嘘は言わん。ユーキを騙そうとも思っとらん」
私は人の目が怖い。その目の中に私に対する軽蔑や嘲りがあったらと思うと怖くて目が見れない。でも、何故か最初の時からマイクの目を見つめることができていた。
そして、マイクはいつもいつも真剣に私を見続けてくれていた。
私が気持ち的に落ち着いたのを確認してからマイクは再び話し出した。
「今までの環境やったら致し方ないで済む。でもな、ユーキは21歳や。そろそろ自分で様々な事を選択して学ばんなあかん。その意志を持たなあかん。偉そうな事言うで。ユーキが五年後、26歳になったときも今と同じやったら、それは『生きる』ということをサボっとるだけや。努力もしないで投げやりに生きているだけや」
そのあまりに強い言葉に心が臆病になっていくのがわかった。視線を下げそうになったとき、ぐっと強く手を握られた。
「五木のこと覚えてるよな?」
いきなり関係のなさそうな話になって混乱しながらも私は知的美女で人懐っこい彼女を思い出して頷いた。
「あいつはカウンセラーの資格を持っていて、かなり優秀や。そんなあいつが言っていた。ユーキは『変わろうと努力している』って。変わりたい、って思ってるんやろ?」
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