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「マイク、その指輪って… 」
マイクの左手薬指に常に輝いているキレイなシルバーのリング。
その存在は最初の方から気付いていた。そしてその『意味』も。でも、最初は『既婚者だったら男性でも安心ね』と思ってたいして気にすることも無かったのだけど。
彼から、家庭を持っている方特有の雰囲気が全くないことや、奥さんの話すら出たこともないこともあって、最近はずっと気になっていた。
でも、聞くのが何だか怖くもあって。聞かない方がマイクに素直に甘えられるような気がして。
モヤモヤと形にならない不安。それが『何』なのかわからなくて。そして、わからないから更に不安になって。
お酒の力を借りて思わず、そう質問していた。
「ああ、コレ?」
マイクが少し苦笑い気味に指輪を触ったとき。
奥の席からガヤガヤと騒ぎが大きくなり、ガタンと椅子が倒れる音とともにキツイ口調の英語が聞こえてきた。
「Well!Why are the black people in such places!」
酔った足取りで赤ら顔の白人男性が近寄ってきた。
明らかにマイク目掛けて暴言を吐いている。
マイクは椅子から降りて立ち上がり、私を守るように私の目の前に立つ。
「If you want to show off your own advantage, go for a police box in front of you」
マイクがそう淡々と彼に告げると、男は「Fuck you!」と怒鳴り、マイクに殴り掛かろうとする。それを周囲の男性や店員が羽交い締めにして止めた。男はもうスラング過ぎて私には理解できない内容をわめいて暴れている。
「ユーキ。荷物すぐまとめて、出るで」
マイクはそう言うとカウンターの中にいる店員に「ごめん、俺が店を出た方が治まると思うんで帰ります。勘定はこれで足りるはずやから。お釣りはいらへんわ」そう言って一万円札をカウンターに置く。
店員は焦りながらも了承の頷きをしたので、マイクは私の手を取って足早に店を出た。
店を出る瞬間、またあの男が一際大きく何かを叫んだ。
私の読解力では理解できなかったけど、マイクはきっとわかったのだろう。私の手を握る手が一瞬、力強くなった。
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