STORY 《Ⅰ》-two-ユーキver.

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すぐに駅前に向かうのかと思ったが、マイクは店近くの交番へと寄った。 「すみません。俺達、今まであの角の店で食事してたんやけど」 交番には二人の警官がいて、いきなり入ってきたマイクに驚いていた。 「それで酔っぱらいに絡まれてもうて、店の迷惑になりそうやったからすぐに出てきたんやけど、騒ぎが大きくなってたら嫌なんで、ちょっと様子を見に行ってもらえたら助かるなぁと」 年配の警官があたふたしながら、若い警官の顔を見て「おい!外人さんや、通訳してくれ」と頼んでいたが。 若い警官は「浅井さん、落ち着いてください。日本語です。更に言えば関西弁です」と冷静に伝える。それはまるでコントのようで、私は思わず小さく吹き出してしまった。 浅井さんと呼ばれた年配の警官は考える表情をしてから「ほんまやな、関西弁やったわ。おい、木戸、ちょっと見に行ってくれ」と若い警官に指示をした。木戸さんは小さく敬礼すると足早に店へと向かう。 「パニくってもうてすまんかなったなぁ。すぐに戻ってくると思うし、ちょっと座って待っててくれたらええよ」と椅子を勧められたので、私とマイクは同時に椅子に座った。 「最近、ここらへんの飲食店は外人さんのお客さんが増えてきてなぁ。喧嘩とかいざこざとか多いんやわ」 浅井さんが説明するに、外国人同士の喧嘩だったり、威勢のいい若者が外国人に喧嘩を売ったりと騒ぎが絶えなくなり、英語が話せないと収拾がつかない事が多くなって、さっきの木戸さんが配属されてきた。木戸さんは英語が話せる新人警官だとのこと。 「んで、悪いんやけど規則やから、ここに名前と住所と電話番号、書いてもろうてええか?」 浅井さんが差し出すノートにマイクはすぐに了承するけど、私の方をチラリと見て。 「大丈夫やけど、俺のだけでええかな?」 「兄ちゃんのだけでかまへんよ。そっちの嬢ちゃんも大変やったなぁ。その酔っぱらいに乱暴とかされてへんやんなぁ?」 浅井さんはすごく優しい表情で私を気遣ってくれる。
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