STORY 《Ⅰ》-two-ユーキver.

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「今回は満足なおもてなしをできませんでしたから、あなた様達の都合の良い時で結構ですので、またお越しになってください。お電話いただければ、うちの得意料理でおもてなし致します」 マイクは彼の名刺を見る。私も少し覗きこんで確認すると、そこには『店長 宗正 忍』と書いてある。こんなに若そうなのに店長なのかと驚いていると。 「宗正さん、好意はめっちゃ嬉しいんやけど、またさっきの客と落ち合ってもうたら……」 マイクの葛藤に宗正さんは満面の笑顔で対応する。 「ですから、本来は開いていない時間帯でお越しください。昼でも夜中でも。僕はあなた方のことを気に入っています。好きな方をもてなす機会を僕に与えてください」 宗正さんの名刺にはたぶん個人の携帯番号。マイクは少しの間、考えていたけれど、元来人懐っこい性質をしている彼はいつもの明るい笑顔を浮かべて、財布から自分の名刺を取り出して宗正さんに渡した。 「ほんま言うともっとあの店の料理やお酒を堪能したかったんで、めちゃ嬉しい申し出です。ありがとうございます」 宗正さんはマイクの名刺を受け取り、笑顔で店へと戻っていった。 「兄ちゃんの機転が効いて良かったなぁ。事前にトラブルを回避できたんやから、こちらからもお礼を言わせてくれや」 浅井さんと木戸さんも頭を下げてお礼を言ってくれる。マイクは「俺がトラブルの元になってもうたんやから、当たり前です」と丁寧に頭を下げて交番から出る。 それに続こうとした私を浅井さんが呼び止める。 「あ!お嬢ちゃん!ちょう待ってや!確か子供向けやけど警察グッズがあるねん。今、持ってきたるからな!」 そう言って奥の部屋に駆け込んで、警察のマスコットキャラだと思われるシールや缶バッジを持ってきてくれた。 恐縮する私に浅井さんは人好きのする笑顔で。 「しょうもないグッズやけど、せっかくのデートが台無しになってしもうたら、あの兄ちゃんが可哀想やからな!」 ニコニコと私にグッズを強引に渡す。戸惑う私に木戸さんも力強く頷いたので、私は「ありがとうございます」とお礼を言って、交番を出た。
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