STORY 《Ⅰ》-two-ユーキver.

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交番を出ると、少し先の暗がりにマイクが待っていてくれた。微かな街灯で彼の表情が見えたとき。 鼓動が激しくなった。 それは感情を消したような無表情で。そんなマイクの表情を今まで見たことがなくて。いつもいつも感情豊かな表情に彩られていたから。 だから、さっきのトラブルは彼にとって辛いことなのだと再確認した。 周りを気遣い平気なふりをしていただけなのだと。 すぐにマイクは立ち尽くしていた私に気付き、笑顔を浮かべる。 歩きながら「何、もらったん?」と聞いてきたので、頂いた品を見せる。 「うわぁっ!めっちゃしょうもないグッズやん。でも、あのおっちゃん警官、人が良さそうやったからなぁ。しばらくは持っててやってな」 彼の軽口に私は首を横に振った。 関西人の『しょうもない』はその意味通りじゃないことが多い。照れ隠しだったり、謙遜だったり。冷やかしだったり。 「今日の大事な思い出の品だから、捨てたりしない。大事に持っておくよ」 私の言葉に嬉しそうに頷くマイク。でも、少し表情を曇らせて。 「ユーキには一番、迷惑かけてもうたよな?ほんま、ごめんな。怖い思いさせてもうた」 確かに怖かったし、驚いたけれど、マイクのせいじゃないので、私は首を横に大きく振って否定した。 本当は気の効いた言葉で彼の心を軽くしたかったけれど、ボキャブラリーの少ない私は「大丈夫。気にしないで」としか言えなくて。 大切な人が落ち込んでいるかもしれないのに、傷付いているかもしれないのに。何もできない自分にひどく落胆してしまう。久々に感じる虚無感。マイクと出会ってから少なくなっていったのに。 そんな私の落ち込みを察知したのか、マイクは陽気な声で。 「あ~!でも、何か飲み足りひんなぁ。それに、最後らへんに撮った写真のレクチャーもできひんかったし。ユーキ、明日休みやろ?もう一軒、付き合ってくれへんか?」 私の顔をおどけた表情で覗きこんで提案してくれる。
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