STORY 《Ⅰ》-two-ユーキver.

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『好き』が傍にあると期待してしまう。 私に無関心だった祖母の言動に一喜一憂して落ち着くことができなかったのも『情』による期待。そこにはいつか好きになってもらえるかもという想いがあったから。 そして『愛情』というものは『カタチ』が変わっていくという法則を知ってしまったから。その着地点を見るには、あの頃の私は弱すぎて。 私を愛してくれていた父や母が手の届かない存在に変わっていったり、母を亡くして気落ちしていた私に心変わりをして離れていったその当時の彼氏だったり。 『好き』を手放せば見なくてすむ。 でも、マイクの存在は私に『ソレ』を思い出させてくれた。だから。 「私は、マイクに出会えて幸せと感じる心を思い出したから。感謝しているの」 『好き』という想いの傍には好奇心や嗜好、幸福感や感情の触れ幅がある。ソレらから離れ、無感情・無表情になっていた私にゆっくりと思い出させてくれた。 私の言葉にマイクは優しい笑顔を浮かべた。 「俺も感謝している。俺の言うことを素直に信じて努力してくれるユーキを尊敬している。なかなかできひんことやで?」 私は小さく首を横に振る。何をすれば良いのかわからない私にとって、客観的な彼の指導は有り難く、自分で思考するときにも手懸かりになっていた。 「俺も、ユーキみたいに心を閉ざしていた頃があるねん。でも、俺には叱ったり慰めたりしてくれた強い両親がいたから、割りと早めに前を向けたんやけど。ユーキにはそんな存在がおらんように感じたから、いらんお節介かもしらんとは思ったんやけど、口だしてもうてん」
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