STORY 《Ⅰ》-two-ユーキver.

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彼の言う『心を閉ざしていた時期』という言葉に私はドキリとした。こんな強い人が、人間を大好きな人が心にバリケードを築いてしまったことがあるなんて。 「それって……人種差別的な……?」 聞き難さはあったけれど、それよりも興味が勝ってしまって尋ねてしまった。 マイクは苦笑している。けれどすぐに真面目な表情になって説明してくれた。 日本生まれ、日本育ちで、小学校までは地元の普通の学校に通っていたこと。 肌の色でいじめようとする子供はいたけれど、ごく普通に立ち向かい、近所の幼なじみ達も協力してくれたので、そこまで波もなく穏やかな子供時代であったこと。 親の希望で中学校からはインターナショナルスクールに通い、そこで初めて差別を受けたこと。 「別に差別してきたあいつや、今日の店の白人が『絶対悪』やなんて思わへんねん。だって黒人がアメリカで奴隷やった時代なんて遥か昔やん。そんときの出来事を体験した奴なんてもう生きてへん。ただそんときの確執が負の連鎖で先祖から子孫に受け継がれてたり、親から刷り込まれてしまったり。それは白人も黒人も同じ。俺の親父は差別なんてくだらないっていう思考の人間やし、俺は日本で育ったから、アメリカで過去起きたその歴史に対して、あんまり偏見はないけど、そうじゃない黒人も白人も本土に行くとほんまに多いねん」 そして高校を卒業した彼はアメリカの大学に進学した。ちなみに五木さんはその大学での同級生だという。 彼の父親の両親、彼の祖父母の家に下宿しながら大学に通い、そこで日本と比べようがない酷い現実を知ったという。 「おまえらはゴミや。汚ならしい黒いゴミ。真っ白な俺達を汚す為に生まれてきた害悪や、と罵られ暴行されて二ヶ月ぐらい入院した。そんときは大学卒業して働いていた時期やったけど」
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