7人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
ただ肌の色が黒い、というだけで個人としての尊厳を無視する残虐な行動。
私は思わず、膝に無造作に置いていた彼の手を握った。
「酷すぎるよ……」
私の呟きにマイクは困った笑みを浮かべた。
「まぁ、俺の方にも原因があったから、一概にその人を責められへんねんやけど、やっぱりそんときに痛感したのは確かや。肌の色が白ければ俺を認めてくれるんか?受容してくれるんか?って」
そして、自分が生まれ育った『日本』という国の素晴らしさを改めて知ったと続けた。
「日本人は奥手で臆病やと主義主張が強い海外から悪く言われることもあるけど、それは日本が島国で他民族と交わる機会が少なかったからこその個性やし、そんな臆病な気質やのに、一旦、信頼したらまるで家族のように『受容』してくれる懐のデカイ民族性やって感じてる」
「受容?」
「せや。島国やからこそ外敵が少なくて、穏やかで優しい気質があるからやろうな。黒い肌の俺でも、『なんや、こいつ、異質やな。攻撃してやれ。あれ?なんやこいつも同じ人間やん、ほな、仲良くしたるわ』みたいな」
まるで漫才のようにコミカルに言う彼に私は思わずクスクス笑ってしまった。
「自分と何も変わらへん人間なんやって受容すること。主義主張が強かったり、信仰心だったり、偏見があるとなかなか難しいことなんやろなぁ」
そして、その入院中に駆け付けてきた両親に半ば強引に日本に連れ戻されて、今があると彼は話を締めくくった。
「本音で言えば『黒人がなんでこんなとこにおるねん』みたいな白人優位の思考はヘドが出るほど嫌いやし、少しヘコんでまうこともある。でもな、俺の容姿はほぼ黒人やけど、半分は日本人やし、この島国で育った大和魂を持ってるねん。嫌なことでも受容できる懐を手に入れたいって努力してる。やからな、ユーキ、泣かんといてくれや」
最初のコメントを投稿しよう!