STORY 《Ⅰ》-two-ユーキver.

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せっかく彼が話の途中で泣きそうになっていた私を和ませるためにコミカルに話してくれていたのに。 自分でも何故泣いているのか理解できていなかった。 感動しているのか、彼を哀れんでいるのか、非常な現実に憤りを感じているのか……こんな天涯孤独でみなしごみたいな私を『受容』してもらえたように感じて喜んでいるのか……。 マイクは困った笑顔を浮かべながら「おいで、ユーキ。よしよししたるわ」と少し強引に私を引き寄せた。 「こんな若さで身寄りがいななって、頼れる大人がおらんくなって、世界から『否定』されとる気持ちになってもうたんやな。他人と同じように笑ったり喜んだりする資格があるんやろうかと距離を取ってもうたんやな。でも、ユーキさえ勇気を出して心を開けば、他人も心を開いてくれるんやで。だってこの日本は『受容』の国やもん。神社の初詣や仏教式の葬式やキリスト教のクリスマスやケルトのハロウィンすら受け入れて楽しんでる国やで。もっと楽に生きたらええねん」 そう言って優しく私を抱き締めて、頭を撫でてくれる。 今まで我慢して見ないようにして感じないようにしていた『独りの寂しさ』が堰を切ったかのように溢れてきた。 ああ、私はこんなにも寂しい気持ちを抱いていたんだ。 今、こうやって暖めてくれる肌や体温の傍にいるから、わかったんだ。 次から次へと溢れる涙。その溢れた分だけ心が軽くなっていく。 感情は必要に応じて吐き出さないと寂しさの澱が溜まるんだって自覚した。 ひとしきり泣いて。彼の腕の中で段々と落ち着いてきたので、私は感謝の気持ちや彼への愛しさや色々なものが心に溢れていて。 その気持ちのまま微笑んだ。 マイクは私の笑顔を何かとても眩しいものを見るように、少し目を細めて眺めていた。 切なさと苦しみと羨望が混ざったような。胸が痛くなる微笑み。
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