STORY 《Ⅰ》-two-ユーキver.

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「ユーキ、キス……してもええかな?」 マイクのこの言葉で空気が一変した。 今までの友情による親愛に満ちた雰囲気から、緊張感漂うものに。 マイクは、基本的に素直な人だ。自分の感情をストレートに出して良い場面だと判断すれば、こちらが恥ずかしくなるような素直な表現をしたり、辛辣と感じるキツイ表現もする。 そこにあるのは彼の正直な想い。 彼は大人だから、本意じゃないこともする。状況に応じてオブラートに包んだ物言いをすることもある。 でも、心を明かして良いと思っている人の前では正直な気持ちを伝える。 だから、今、彼が私にキスしたいと思ったのは正直な衝動。それが友人としてなのか、異性としてなのか、人としてなのか、の判断はつかなかったけれど。 きっと、この今の空間は彼の心の琴線に強く触れたんだ。そして、その溢れだした想いは、素直な欲望に変化した。 何故かはわからないけれど、そうわかってしまったから。 恥ずかしい、だとか。 これからどうなるのか、だとか。 変化を恐れる気持ち、だとか。 そういう付加的なものを全て取っ払った素直な気持ちに従った。 「いいよ」 やっぱり慣れない状況に素っ気なく短く了承してしまったけれど。 いいよ。マイクとなら、キスしてもいいよ。 その想いを載せて目を閉じた。 動く空気。ピリピリと肌が切れそうな位の緊張感に満ちているけれど、だからこそ、彼の気持ちが伝わる。 そっと私の顎に彼の長くて大きい指が触れて。優しく、柔らかくて大きなものが私の唇に触れて。 溢れだす想い。 それは『私』のものなのか『彼』のものなのかわからなくなる。それくらい、境界線が緩く溶け合う感覚 。 その感覚に名付ける『言葉』を私は知らない。きっと彼もわかっていないだろう。 でも、幸せな瞬間だった。
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