STORY 《Ⅰ》 -two-マイクver.

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ユーキと裏契約という名の『友達』になってから、俺はずっと幸せを感じていた。 マリカがユーキを『俺の大好物』と揶揄した意味がわかってからは、幸せやけど辛く感じることが増えた。 四ヶ月前のユーキと今のユーキを見比べたとき、ほんまに同一人物なんか?と驚くくらい、彼女は変わった。 元々素直で飲み込みも早い性質やったんやろう。 でも、そうやったとしても、彼女の学ぶ意欲や集中力は物凄くて、教える俺の熱意は高まる一方や。 主である英語はもちろんやけど、彼女に必要だと感じる様々なこと。生活環境を整えることから始まり、料理やパソコン操作、応用編としてはセンスの磨き方や、生活の知恵的な雑学、身だしなみの整え方などなど。 一方的に俺の好みを押し付けないように細心の注意を払いつつ、彼女の興味の矛先が向くように誘導しながら、死んだ魚の目のようやった瞳がキラキラと輝くのを見るのが楽しみで仕方がなかった。 世の中に在るモノに対して。 これは『好き』 これは『苦手』 これは『普通』 と選別する作業の積み重ねが、やがて『個性』となっていく。 俺はそう思っているから、まずはその作業を無意識でもできるように教えた。 最初は目に見えてわかりやすい服や小物、アイドルや俳優などの芸能人、雑貨や家具、クラシックや洋楽・邦楽・インストなどの音楽、映画・ドラマなどなど。 それらの知識を深める方法などを教えて自分のセンスで選ばせて、批評して更に興味を増やしていく。 そして目に見えないけれど、思考の仕方、どういう性格と性に合いやすく又合いにくいのか、好きなのか苦手なのか、苦手なのは何故なのか、好きなのは何故なのか、とどんどんと掘り下げていって。 段々と自分の『好み』がわかってくると、何を目にしても自分の価値観が明確なので動揺が少なくなる。 そんな感じで色々なことを伝えていった。 その結果。ユーキは自分の存在をどこか否定しがちな性質故に、落ち込みやすかったり、後ろ向きになりやすかったりはしているけど、随分と前向きになり明るくなっていった。 やはり、俺以外の人と話すのは緊張するみたいで、大人しい雰囲気ではあるけれど。 晴れの笑顔の威力はどんどん増しているように感じる。
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