STORY 《Ⅰ》 -two-マイクver.

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俺は自分の実益も兼ねているから報酬はいらないと言っているけど、まぁまぁの報酬がでる。 その発案者であるマリカが報酬も個人的に支払っている。 まぁ、オーナーも知っていて黙認している。 要するに一種の『マイフェアレディ』計画。マリカや俺らが気に入ったお客様の内面や外見を磨く仕事。 ちなみに『マイフェアレディ』は古いミュージカル映画のタイトルで、言語学者の教授が訛りの酷い貧乏で冴えない風貌の少女を社交界デビューができる程の貴婦人に仕立てあげる内容。 日本的に言えば『源氏物語』の『紫の上』。おとぎ話的に言えば『シンデレラ』 お客様に頼まれての仕事ではないので実質利益なんてない。完全にマリカの趣味や。 何故、そんなお金にならないことをしているかというと、マリカは一言で言えば『人間オタク』 株式会社ファウルの事務責任者であり、主にファイブ★案件を担当しているが、週に一度、私立高校のカウンセラーとしても勤務している。 趣味と実益を兼ねているライフワークは『人の観察』『人の成長過程の研究』『環境による人格形成の研究』 ちなみに心療内科の博士号も持っていて、研究内容の論文も発表していたりと何かと忙しくもパワフルな女傑や。 そして、『SL』をしている最中は月に2・3回程の報告会を秘密裏に行い、マリカの研究に役立っているという図式。 「今、SLやってるんって俺と蔵王(ザオウ)だけやっけ?」 マリカが頷くと同時にオーダーした食事が運ばれてきたので、しばしの間、会話もなく空腹を満たしていた。 そして、マリカがナフキンで口元を軽くぬぐって、グラスに入ったミネラルウォーターをぐいっと飲み干した後。 剣呑な笑みを浮かべて俺を糾弾した。
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