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「ねぇ、マイク。SLのルールは覚えているわよねぇ?」
俺は思わず、マリカの目を見ることができずに下を向いてしまった。
『人を育てる』
という大義名分を掲げているけど、やっていることは被験者に内緒の『研究』の一環や。
しかも、それを遂行しているのはマリカが選んではいたけど、大雑把に言えば人間観察に優れて、様々な事柄に精通しているがただの素人。
もちろん、『変わりたい』と願っているお客さんに限らせてはいるし、洗脳みたいなやり方はしていない。
それでも、専門外の人間がそれをやっている以上、マリカへの報告に嘘偽りはご法度やし、隠すこともご法度。
その報告を聞いて専門であるマリカが助言することもあるし、精神的な傷を付けてしまう可能性があればSLを中止させることもある。
そして。
精神医療の専門家であるマリカに嘘は通じない。報告する俺達の少しの違和感で看破してしまう。
大学時代から付き合いがある俺からしてみれば、ほんまにソレだけの力かいな?と疑問に思うこともある。専門家としての能力以外に何かあるんちゃうかと。
それぐらい鋭くて、見透されている感覚。
そう。さっき語った『今月のユーキ物語』には先週のキスのことを入れていなかった。
嘘はついていないが真実を語っていない。
「四ヶ月、下心も抱かずに真剣に遂行してたから安心してたけど……やっぱりマイクの『大好物』やったんやなぁ、田中様は」
耳障りな嫌みな口調でマリカは言う。
「アホやアホやと思っとったけど、ほんまにアホやったか!あんたは!正直に報告してくれてたんならまだ救われるけど隠すなんて!まさかシタんやないやろな?」
『異性として抱いた』のかと詰問されるが、さすがにそこまで俺も考えなしやない!
「さすがに抱かんわ!今の俺は『未来』がないんやから!そんな酷なことはようせん。チュウしただけや」
マリカは呆れたような目線で俺を見る。
「それでもやったらあかんことや。あんた、ジェシカと田中様を重ねてたりせぇへんやろなぁ?」
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