STORY 《Ⅰ》 -two-マイクver.

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「ねぇ、マイク。SLのルールは覚えているわよねぇ?」 俺は思わず、マリカの目を見ることができずに下を向いてしまった。 『人を育てる』 という大義名分を掲げているけど、やっていることは被験者に内緒の『研究』の一環や。 しかも、それを遂行しているのはマリカが選んではいたけど、大雑把に言えば人間観察に優れて、様々な事柄に精通しているがただの素人。 もちろん、『変わりたい』と願っているお客さんに限らせてはいるし、洗脳みたいなやり方はしていない。 それでも、専門外の人間がそれをやっている以上、マリカへの報告に嘘偽りはご法度やし、隠すこともご法度。 その報告を聞いて専門であるマリカが助言することもあるし、精神的な傷を付けてしまう可能性があればSLを中止させることもある。 そして。 精神医療の専門家であるマリカに嘘は通じない。報告する俺達の少しの違和感で看破してしまう。 大学時代から付き合いがある俺からしてみれば、ほんまにソレだけの力かいな?と疑問に思うこともある。専門家としての能力以外に何かあるんちゃうかと。 それぐらい鋭くて、見透されている感覚。 そう。さっき語った『今月のユーキ物語』には先週のキスのことを入れていなかった。 嘘はついていないが真実を語っていない。 「四ヶ月、下心も抱かずに真剣に遂行してたから安心してたけど……やっぱりマイクの『大好物』やったんやなぁ、田中様は」 耳障りな嫌みな口調でマリカは言う。 「アホやアホやと思っとったけど、ほんまにアホやったか!あんたは!正直に報告してくれてたんならまだ救われるけど隠すなんて!まさかシタんやないやろな?」 『異性として抱いた』のかと詰問されるが、さすがにそこまで俺も考えなしやない! 「さすがに抱かんわ!今の俺は『未来』がないんやから!そんな酷なことはようせん。チュウしただけや」 マリカは呆れたような目線で俺を見る。 「それでもやったらあかんことや。あんた、ジェシカと田中様を重ねてたりせぇへんやろなぁ?」
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