STORY 《Ⅰ》 -two-マイクver.

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ぐっと言葉に詰まる。 ジェシカ・アンダーソン。 俺の妻。 大学を卒業してから就職した俺は約一年後に彼女と結婚した。 ジェシカと俺とマリカは同じ大学やったから、ジェシカとマリカは友達同士。彼女のことも、俺達の間にあったこともよく知っている。 そして、俺の心のリハビリとしてSLをやってみないかと最初に提案したのもマリカや。 「どんだけ傷ついて壊れそうになっても、人の心は『やり直し』ができる。別の成功過程を積み上げることで癒されていく。あんたはジェシカの為にも、彼女以外の人とでやり直しをせんなあかん」 自信がなくて躊躇していた俺に告げたマリカのこの言葉。 それを聞いて俺はSLをやる決意を固めたんや。 今までのSL経験は四人。ユーキが五人目。 最初の二人目までは男性で。三人目・四人目は女性。四人ともそれぞれつまずいていた部分は違っていたけど、それぞれが自分らしさを取り戻して、頑張っている。 今でも良い友人として、時々近況を報告し合う仲だ。 「で?どうなん?回答次第では担当から外すから、正直に答えて」 冷静な声で告げるマリカの質問に、俺は頭を冷やすためにしばらく目を閉じて黙った。 マリカは焦れもせず、落ち着いた雰囲気で俺の答えを待っていてくれる。 彼女の担当を外れたくない。 恋愛感情は確かにあるけど、それ以上に彼女らしく輝きはじめたユーキの成長を間近で見ていたいという想い。 ユーキと離れたくない。 でも、一番大事なんは、ユーキの成長の阻害に俺がなってしまうのであれば、離れる覚悟を持たんなあかんこと。 キスしたことに後悔はない。 それでも未来の関係性を保てない俺がしたらあかん痛恨のミスやった。俺自身のこの行動が未来の選択肢をひとつにしてしもうたんや。 「確かにジェシカとユーキは精神的に似とる部分はある。でも、ユーキに惹かれたんはジェシカに似てるからやない。彼女の奥底にある『強さ』に俺は救われ続けてる。彼女が花開くために今の俺がするべきことはひとつ」
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