序章 チカラ

2/2
前へ
/2ページ
次へ
ーーじゃあ、あげる。 「遠慮なくいただくよ」 そう答えると同時に僕の体が急に重くなった。何かがのりうつったのか?チッと僕は舌打ちをした。ほかの人に見えないものが僕に見えるのなら大いに喜ぶが、憑依されるとなれば話は別。 「君、殺すよ?」 見えないソレに僕は言い放った。心なしか体が軽くなった。 「で、君は僕に何をプレゼントしたのかな」 肩に手をやり、首を左右に動かすとポキポキと骨が鳴った。中性的な声から返答はなかった。 「僕の妄想癖も重症だね」 やれやれ、と目を閉じながらかぶりを振ったとき、瞼の向こうに一瞬女の姿があった。 目を開けるとそれは見えず、目を閉じても暗闇が支配し、女の姿を確認することはできなかった。一秒にも満たない刹那、その女の姿は脳裏に刻まれた。 わずかに口元に笑みをこぼしたしたり顔は何を意味するのだろう。僕は久方ぶりの高揚を味わいながら家路についた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加