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はじめに
私の名前は、神前良夫(かみまえよしお)、45歳。小学校で教員をしている。5年生を担任しながら、教務主任を兼任している。平成12年のゴールデンウイークもあっという間に過ぎ、心地よい風が午後の教室に入り込み、子どもたちはとっても気持ちよさそう。
校舎の三階の窓から外を眺めると、まだまだたくさんの鯉が大空を泳いでいる。最近は、金ぴかの鯉まで大空を優雅に泳いでいる。教室に目を戻すと、金魚鉢の中の金魚のように体がゆらゆら揺れている子どもがたくさん。
ゴールデンウイークの疲れもあり、きっと気持ちがいいんだなあ。でも、私の心中は、揺れるどころか穏やかではない。明日から37日間この教室を離れなければならない。今日、子どもたちが帰るまでに明日からの予定や私の代わりに来てくれる先生についても話をしなくてはならない。もちろん、保護者にも明日からの説明プリントを配布する。子どもたちは、担任の気持ちをあまり分かっていないのか涼しい顔をしている。説明が終わり、明日からの代わりの先生の話をした後、子どもたちは次第に神妙になり、
「先生行ってらっしゃい。」
「気をつけてね。風邪をひかないで。」
「お土産楽しみにしています。」など、この1ヶ月間、口にしなかった言葉を私にかけてくれる。
その言葉を心に噛みしめながら次の日の朝、和歌山市から茨城県つくば市へ出発。そこで何が待っているのか、まだあまり分かっていない。
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