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祭壇に降ろされたノエはくたりとしていたが、私が抱き起すと力無く笑ってくれた。それが愛おしくて、申し訳なくて、私はノエを抱き締める。よく頑張ってくれた、よく生きてくれた、ありがとう。呟いた言葉はすかさずククが通訳をしてくれて、ノエも私に身体を預けながら、見守ってくれてありがとう、ちゃんと届いてたよ、と言った。意識は確かに深くへ封じ込まれていたはず。そんな中でも通じ合えた。
ノエの身体の調子を手早く確認してくれたサンたちも涙ぐんでいて、「よう耐えられました、ご立派で御座います」と一度ずつノエと抱擁をした。
最後にククが、産まれたばかりの卵を抱えて泣き濡れた顔でノエに笑いかける。
「御子でございます、ノエさま。さあ……」
ノエは細い腕を伸ばして卵を受け取る。疲れているノエが落としてしまわないように私も支えた。二人で卵に触れて、顔を見合って、微笑み合う。
『――……、――……』
「……産ませてくれて、ありがとう、と……」
「それはこちらの台詞だ、ノエ。産んでくれてありがとう。本当に、本当に……、こんなに苦しんだノエに申し訳ないとは思うが、……本当に嬉しい」
こんな感情は身勝手だろうかと思う。しかしノエはすぐに首を振り、私の腕と、卵に柔らかくキスを落とした。
『――――……、――……』
「う、産まれてくる子を、いっぱい愛してあげようね、と……。きっと幸せにしてあげようね、と……」
それはどこまでも優しい祈りだった。
通訳してくれるククはもう号泣していたし、サンもヌイも、私も泣いた。ノエも目を潤ませながら、本当に愛おしそうに卵を撫でた。
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