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無限の愛に抱かれた卵は、静かに孵る時を待っていた。
原初の森で暫くの療養をした後、私たちは揃って継ぎの竜さまの元へご報告に行った。もちろん儀式をする前にも行っている。今回は、産まれた卵を抱えながら。
継ぎの竜さまはいつものようにその巨体を森のように横たえ、赤ん坊を抱くように卵を抱えるノエを見て染み入るような笑みを浮かべてくれた。
『よく頑張ったな、ノエ、二度も竜の子を産み落とすとは……』
『――――』
『ふむ……、なるほど、お前の心根は真に善良だ。この森にも愛されているのが分かる……。それに、成り行きとはいえ、良い夫を持ったな……』
いいや、私が良い妻を持ったのだ。しかし反論の余地もなく、継ぎの竜さまはノエを自分の元へと呼んだ。そしてノエが掲げた卵に、深い息を吹きかける。
『古いまじないだ、お祈りくらいに思っておけばいい。強い竜に育つように、とな……。それで、子竜の名は何か決めているのか……?』
『――――』
『ああ、竜の子の名は母親が決める慣習だ。お前が決めるが良い、ノエ……。もちろん、産まれてからでも構わん。男か女か、分からんからな……。ふふ、贅沢な疑問だ』
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