間章1. まさか、まさかの

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 あの時に子どもが出来ていたのか。知らずに普通に過ごしてしまった。それよりも、人間の子どもが生まれるまでにはだいたい十か月と聞いたことがあるが、一年もお腹の中に宿したままで大丈夫だったのか。  俺の不安は、ククが通訳してくれた先生の説明で払拭された。竜の妊娠期間はだいたい一年と少し。卵を産んでから、その殻が破れるまで一月といったところらしい。  つまり、産まれるまで、もう少し。 『――――、――――』 「ええと、竜の皆さまは出産を大きな問題にしません。身体の大きさに対して、卵があまりにも小さいので。構造的に人型の時は産道が狭いので、お産みになられる時は竜本来の姿に戻ります。しかし、ノエさまは……」 「そもそも産道が無い場合は……、いやその前に、なんで俺の中に卵が……?」  人間の身体の構造的に納得がいかない。先生もククも首を傾げてしまい、「もしかしたら一度儀式を通過したことが影響しているのかもしれません」と困ったように説明された。あれは一過性のものではなく、永続的に俺の身体を変えたものだったのかもしれない、と。  そう言われてしまうと、そういうものかと思うしかないが。  とにかく俺の腹には理由はよく分からないが卵があるのだ。そしてそれが産まれてくるまであと少し。  問題は、どうやって産むか。 「そのまま産むのは無理です」 「まあ、そうでしょうね……」     
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