第三章 1. あなたと育んだ

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 楽しみにしてもいいだろうか、と訊いてみた。優しい夫は俺の肩を抱きながら、ずっと傍にいる、何があっても私が守るから大丈夫、と言ってくれた。それならもう、俺はついていくだけだ。  「ありがとう」。一番上に重ねられた温かい言葉を示して、俺はロワに凭れ掛かる。誰かに甘えることがこんなにも心地のいいことだと、知っていたつもりで、しかしここ数年のうちに改めて実感した。ロワの大きな腕に包まれる、この安心感が堪らない。  あなたと育んだ愛が、こんなにも大きくなったよ。自分の声でそう伝えたい。だけどそれだけは、お互いにどんなに頑張ってもできなかったから、せめて体温を交換し合った。俺がロワの頬に触れると、彼はゆっくりと微笑んで、俺にキスをくれる。  蕩けるような甘い時間を、この竜と。  それが、俺に与えられた幸せ。
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