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「あなたの話は分からないことばかりだ。そうだ、あなたは何故、王などという立場のトーリオメリスの動向をそこまで詳しく知っているんだ? 見たと言うのはまだしも、会話を聞いたというのはどういうことだ? あなたは何者なんだ?」
矢継ぎ早の質問に、ヒロは少し狼狽える。ぱくぱくと口を開けたり閉じたりしては言葉を探しているようで、その眼はまた大粒の涙を零し始めた。
嗚咽の中に混じる謝罪に、エメもプリーエルも心配そうに彼の顔を覗き込む。二人が海に落ちてしまわないように支えながら、私もヒロの次の言葉を待った。
海底都市への、唯一の足掛かり。
その彼が、ゆっくりと、その泣き濡れた顔を上げた。
「僕はトーリオメリスの、……妻です」
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