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間章2. 愛と祈り
卵の成長を安全に見届けるならば、王都に戻り総合病院で経過を見るのが良いだろうという話になり、俺たちは王都の病院に戻った。俺の診察をしてくれた産婦人科の先生は、俺がこの卵を産みましたと言うと酷く驚いた顔をしていたが、すぐに儀式の過酷さに関する噂を思い出したのか優しく俺を抱擁してくれた。よく頑張りましたね、と言われたようだった。
それから病院に卵を預け、一か月ほど。
運良くエメが長期休暇で帰って来たちょうどその頃、そろそろ産まれそうだという連絡を受けて、俺たちは急いで病院に向かった。ロワも仕事を抜けて来てくれて、三人で専用室のようなところで卵を見守った。
確かにこつこつと音がして、内側から殻を破ろうとしているのが分かる。エメも息を潜めてその様子を凝視していた。
そして、俺たちが見守り始めてから、一時間くらい経った頃。
「あっ」
「あ!」
『――』
卵の頂点が、ぱきっと割れた。
中から覗いた、白い鼻。それからぐりぐりと殻を押し上げながら露わになる、温かみのある白の鱗、そして、――青の瞳。
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