2. 出発前夜

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2. 出発前夜

 俺とロワが、長期休暇と共に修学旅行期に入るエメを学校まで迎えに行った時。  プリーエルは大泣きしていた。 「やだー! プリーエルも、行く!」 「わがまま言っちゃダメ!」  どうやらエメの修学旅行に、自分はついて行けないことを知ってしまったらしい。泣きじゃくるプリーエルをエメが叱る様子は、二人には悪いが微笑ましい。徐々に激しさを増していく泣き声に、エメの見送りに立ってくれていた担任の先生は困り果てた顔をしていた。  俺たちに気付いて、安堵したように眦を下げる。 『――――』 『――、――――』  ロワと先生が話しているうちに、プリーエルは大粒の涙を零しながら俺に突進してきた。勢いよく抱きつかれ、俺は後ろに倒れそうになるのを堪える。縋りついて泣くプリーエルを、エメは俺から引き剥がそうとした。 「わがままは、ダメなの! ママを困らせちゃダメ!」 「やー! ママ、プリーエルも、いっしょー!」  エメは俺の負担を思って弟を諫めるが、当の俺は、俺の服を涙で濡らすプリーエルについつい甘くなってしまう。抱き上げて、頬にキスをして。ロワと顔を見合わせて苦笑する。     
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